転職しようと決めて、まず職務経歴書を書き始めた。そこで手が止まった。
書けることが、何もない。
毎日エクセルを開き、数字を集め、定型のフォーマットに流し込み、上司に提出する。それを何百回と繰り返してきた。でもそれは「この会社のこのフォーマットを知っている」というだけで、一歩外に出れば誰も評価しない作業だった。専門性と呼べるものも、他人に説明できる実績も、自分の名前で語れる仕事も、一つもなかった。
このまま数年経てば、年齢だけが上がり、市場価値は下がる。気づいたときには、もうどこにも行けなくなっている。それが、あの日ぞっとした理由です。
毎日忙しく仕事をしているが、専門性があるという実感はなかった。
この記事はデータ集計担当だった私が日系金融から外資メーカーへ転職し27歳で年収800万円になるまでの記録であり、100本以上の各論を書く当サイトの出発点です。
出発点:日系金融大手・国際事業部の集計担当だった4年半
2021年4月、新卒で誰もが知る日系金融大手に総合職として入社しました。配属されたのは日本の金融サービスを海外に広げていくための部署で、私はそこでKPI管理を担当することになります。
仕事の流れはこんな感じでした。
- 社内システムから数字を抽出する
- 期初計画と実績の差分をExcelで集計する
- 上振れ・下振れの要因を営業部にヒアリングする
- 月次報告資料にまとめて上司に共有する
- 上司がそれを管理職会議で報告する
最初の1〜2年は正直、面白かったです。会社全体の数字が見える。どの事業部がどう動いているかが手に取るように分かる。新卒1年目から経営層が見ている資料を作っているという実感もありました。
一次データに直接触れる仕事なので、数字という事実をベースに上司と議論できるようになり、「ここの伸びは××が要因です」と特定領域については上司より深く語れるようになっていきました。
会社からは海外駐在ルートも提示されていました。国際事業部所属で、英語もできて、海外出張も経験している。「次の人事で海外に来てくれ」という飲み会の席での誘いなら、何度かもらっていました。
条件だけ見れば、悪くない。むしろ、かなり恵まれている方だったと思います。
社長賞の同期がローテで配属されてきて、ぞっとした日
転職を考えるきっかけになる出来事は、ある日唐突にやってきました。
営業で社長賞を受賞した同期が、ジョブローテーションで私の部署にやってきたのです。私を含め、彼への期待は極めて高かった。年次は同じでも、営業現場で結果を出してきた人間です。「この同期、絶対デキるんだろうな」と、勝手に身構えていたくらいです。
でも、現実は違いました。
Excelの操作もままならない。データの読み方もわからない。報告用の資料も上司から訂正ばかり。最初の数ヶ月、彼は私の部署でまったく使い物にならなかったのです。
悪い人ではない。むしろ素直で、努力家で、仕事への姿勢は立派でした。営業で結果を出してきたのも本物です。ただ、業務領域がガラッと変わると、年次が同じでも一からやり直しになる。それが現実でした。
その光景を見ながら、私はぞっとしました。
逆もあり得る——次のローテーションで私が営業に異動したら、私も彼と同じ状態になるんじゃないか。
4年半積み上げてきたものが、部署を移った瞬間にゼロになる。そしてもう、年次は上がっている。後輩から見たら「使えない先輩」になる。
そのときに初めて、自分が本当に身につけている「ポータブルスキル」は何なのか、真剣に棚卸ししないとマズいと思いました。
スキルを棚卸ししたら、ぞっとした(でも見方を変えたら武器だった)
客観的に証明できるスキルを、紙に書き出してみました。
- Microsoft Office Specialist Excel(資格あり)
- Tableau Desktop Specialist(資格あり)
- TOEIC 800(ただし会話経験は乏しい)
- 社内専用システムでのデータ抽出(社外では使えない)
- 社内会議の資料作成ノウハウ(社外では使えない)
並べてみて、もう一度ぞっとしました。社外でも通じる汎用スキルが、驚くほど少ない。
今の会社でなら通用するスキルだが、ほかの会社で通用する気がしない。
ただ、ゼロではない。ExcelとTableauは社外でも使えるツールです。しかも私は毎月データを見て、計画との差異を分析して、資料にまとめている。「データ分析」と言い張れなくもない。
そう、都合よく解釈しました。データ分析を軸に転職すれば、社外でも通じる人間になれる——そう信じて、転職活動を始めたのです。
遠回り:資格を取るために、半年溶かす
「データ分析」という単語から連想して、最初に相談したのはITに強い転職エージェントでした。しかし反応は芳しくありませんでした。
IT業界が求めるのはPythonやSQL。ExcelやTableauは評価されにくく、紹介してもらえる求人は常駐型のSIerがほとんどでした。
悔しくなって、Oracle Master Silver(SQL)という資格の取得に着手しました。資格があれば戦える、と思ったからです。結果として、これは半年近くの遠回りになりました。
試験には合格しました。でも、実務で使ったことのないSQLの知識は、頭でっかちなままで止まっていました。そして気づいたのです。
資格は知識の証明書であって、業務経験の証明書ではない。
採用担当者が求めているのは「資格がある人」ではなく「実際に使える人」です。どれだけ資格を積んでも、業務で使っていなければ評価されない。半年かけて、ようやくそのことに気づきました。
エージェントに5社登録して、当たりは1社だった
半年かけて出した結論は、「資格を取れば戦える」でした。そして、その結論は外れていました。
自分の頭で考えた最適解が、間違っていた。ここでようやく、転職エージェントに頼ることにしました。
「転職エージェント おすすめ」で検索して出てきたところ、広告で見かけたところ。深く考えず、合計5社に登録しました。
先に結論を書きます。この5社のうち、私の経験をちゃんと言葉にしてくれて、最終的に内定まで運んでくれたのはJACの一社だけでした。
もちろん、担当者が良かっただけかもしれません。同じ会社でも人によって差が出ることは、このあと嫌というほど知ることになります。それでも、次に転職するときもJACにお願いしたいと思っています。
残りの4社。うち2社は、書類を読んでもいなかった
差は、面談が終わった直後から出ました。
何社かは、面談が終わるとすぐに求人メールが飛んできます。数は多い。でも、なぜ私にこの求人なのかの説明はありません。右から左に流しているだけです。
決定的だったのは、職務経歴書の誤字に誰も気づかなかったことです。2社ありました。
「いいですね、これで進めましょう」と言われたその書類に、単純な変換ミスが残っていました。つまり、一行も読んでいないのです。
JACとの面談で、私の経験は言葉になった
では、JACは何が違ったのか。
最初の面談で聞かれたのは、希望の求人ではありませんでした。前職で毎月何をやっていたのか。それだけを、延々と掘られました。
「その数字は、誰が見るんですか」「差分が出たとき、次に何をするんですか」「それは決まった手順があるんですか、自分で考えているんですか」
答えているうちに、担当者が私の言葉を拾って、並べ替えて、返してくれました。
- 一次データに直接アクセスし、目的に合った数字を抽出できる
- 計画と実績を比較し、KPIを継続的にモニタリングできる
- 市場の公開データと自社実績を突き合わせ、定性情報も加えて差異を説明できる
- インサイトを経営層・管理職向けのレポートとして整理・提示できる
- 営業部門とすり合わせながら、改善アクションまで提案できる
こうして書き出すと、悪くない。むしろ、かなりいい。
上司の立場からすれば、「今月なんでこれ悪いの?」と聞いたら、根拠のある説明と改善案がセットで返ってくる。それが私でした。
全部、自分で言った言葉です。並べ替えられて初めて「ああ、自分はこれをやっていたのか」と分かりました。当たり前すぎて、自分では価値に気づいていなかったのです。
この方向で職務経歴書を書き直して見せたとき、担当者から返ってきたのは「これはいいですね」でした。あのとき、少し泣きそうになりました。
そして、この棚卸しの中でいちばんの武器になったのが、次に書く訪日外国人の話です。①から⑤の順で話す形に整理したのも、JACとの壁打ちの中で決まりました。
面接で武器になった「5ステップ・ストーリー」——訪日外国人の話
職務経歴書の方向性が定まってからは、書類選考は驚くほど通るようになりました。応募5社で書類は全通。これには私自身が一番びっくりしました。
面接でも一貫して評価されたエピソードがあります。今振り返ると、これが書類と面接の両方で差別化軸になっていました。
5つのステップで構成されています。
① 課題発見:売上が上がったのに、誰も理由を説明できなかった
ある月、私が担当していた事業部の売上が明確に上振れました。経営層から「説明してほしい」と要請が降りてきましたが、営業ヒアリングしても答えはこんな感じです。
- 大型キャンペーンを打ったわけではない
- 新サービスを出したわけでもない
- 「みんな頑張ったからじゃないですかね」
普通ならここで「現場が頑張った結果です」と上に報告して終わりです。でも、それでは翌月以降に再現できない。私はもう一歩踏み込むことにしました。
② 可視化: 誰もが納得する数字で説明ができた
営業ヒアリングを続けるうちに、若手の一人がぽろっと言いました。「最近、店頭で外国人のお客さんが多い気がします」。
仮説:インバウンド需要では?
すぐに出入国在留管理庁の訪日外国人数統計を取得し、社内売上データと比較できるダッシュボードを作りました。
とても綺麗な相関でした。訪日外国人数の月次推移と、該当事業部の売上が、ほぼ重なるように動いていたのです。
③ 打ち手提案:「この波に乗らない理由がない」
そこからは早かったです。ダッシュボードを根拠に、外国人向けキャンペーンを打つべきだと提案しました。
- 訪日外国人数は前年比で伸び続けている
- 自社は外国人向け施策を何もやっていない
- 競合他社もまだ手を打っていない
- 先行者として獲りに行くなら、今
口頭で「やりましょう」と言うのと、数字をみせながら「この相関を見てください、この波に乗らない理由がないですよね」と言うのでは、提案の重みが全然違います。
④ 部署間調整: 数字が「共通言語」になった
ここが一番泥臭かった部分です。
マーケ部はキャンペーン企画、営業部はカスタマー対応、企画部は店頭オペレーション整備、システム部で実現可否確認。各部署に依頼すると、「自分の仕事が増える」と嫌がります。
でも、全員が同じ数字を見ていると議論が早いんです。「この数字が動いているのは事実ですよね」という共通認識から入れる。打ち手の議論からスタートできる。数字が上がるイメージを共有できました。
数字が部署横断の共通言語になりました。これは、転職してからも何度も実感することになります。
⑤ 結果:競合がやってない領域でシェアを獲った
競合他社がやっていなかった領域だったため、シェアを一気に取れました。具体数字は社外秘ですが、想定を明確に上回る水準で推移し、翌期以降も継続施策に組み込まれました。
「数字から得られた示唆で事業を動かした」と言える経験は、私が持っているスキルです。
このデータドリブンなストーリーを、書類でも面接でも一貫して語りました。外資だろうが、異業種だろうが求められているスキルなので、選考で予想以上に強い武器になりました。
言語化のあとの動きも、速かった
語れるものが固まってからは、驚くほどスムーズでした。
日系金融から外資メーカー、という提案
私は当初、「データ分析」という単語から連想して、IT寄りの求人ばかり見ていました。
外資メーカーという選択肢を出してきたのは、JACです。
金融からメーカーへ、しかも外資へ。自分では発想すらしなかった飛び方でしたが、「あなたの強みはツールではなく、数字で人を動かしたところにある。それが一番評価されるのはここです」という説明には納得がありました。
結果として、いま私が働いているのはその会社です。年収800万円になったのも、この一社でした。
面接対策は「話し方」まで踏み込んでくれた
いちばん効いたのは、面接対策でした。
ストーリーをJACと一緒に作ったので、対策の解像度が違います。どの質問でどのエピソードを出すか。5ステップのどこから話し始めるか。聞かれていないことを、どこまで足すか。
「用意した話をする」のではなく、「相手の質問から、自分の話に持っていく」やり方を教わりました。書類を添削してもらうだけでは、絶対に身につかない部分です。
集計担当だったあのころの私と、同じ不安を抱えている方へ
伝えたいことは、ひとつです。
あなたが今やっている仕事は、ちゃんと評価されます。
仕事があるということは、誰かがあなたを評価して、任せてくれているということです。価値がないものに、毎月お金は払われません。
ただ、その評価を社外にも届かせるには、言語化が必要です。私は半年かけて資格を取りましたが、転職に効いたのは資格ではなく、経験を言語化したことでした。
そして、その言語化は一人ではできませんでした。自分の経験は、自分にとっては当たり前すぎて、価値が見えないからです。
現職にバレずに、無料で、他人の目を入れられる。それが転職エージェントを使ういちばんの理由だと思っています。私の場合は、それがJACでした。
まだ転職すると決めていなくても大丈夫です。私も登録した時点では、「とりあえず自分の市場価値を知りたい」くらいの気持ちでした。
まずは、一度登録して、話を聞いてもらうところから。
